ストリートビューは資産価値や家族構成を晒すツール

全国の訪問販売セールスマンに朗報だ。

山田太郎
東京都三鷹市***町1−2−3
資産規模:4000万円程度と思われる一軒家
所有車:プリウス
家族:男性
備考:楽天で健康食品を購入

鈴木一郎
東京都多摩市***町1−2−3
資産規模:築20年程度のアパート
所有車:なし(自転車)
家族:男性、子供、女性
備考:女性は美容整形の経験あり

Googleによってこのような名簿がほぼ無料で手に入るようになった。
名簿屋から苦労して手に入れる必要はない。Googleが引き起こしたチープ革命は、訪問販売にも劇的なビジネスチャンスをくれたようだ。

――というのはやや皮肉な書き出しだが、Googleストリートビューの引き起こした現実の一つだ。Googleストリートビュー日本版は様々な議論を巻き起こしている。*1ストリートビューはプライバシーを侵害している、いや、監視カメラのほうが問題だ、携帯カメラのほうが問題だ、自分は問題に思えない、アメリカと日本でプライバシーの概念が違うetc...。侃々諤々の議論のなか、直感的に自分の感じた問題は、この「名寄せ」の時代において、住所が凶悪なプライマリキーになってしまうという点だった。

昔、サラ金は顧客の返済能力を見るために顧客の家を見学したそうだ。「洗濯物が干してある」「奥さんの気配がある」ようなら返済の可能性が高い。ぼろい一人暮らしなら返す可能性が低い――。この例が示すようにように家の外見は大きな情報源となる。*2だからセールス業者はWinnyで流出した個人情報(住所)をGoogleストリートビューに入力するだけで良質な名簿を手に入れることができる。家の外観や、車、洗濯物からおおよその資産状況や家族の数を判断すればよい。セールスにつかうものなので、判らないところは無視してかまわない。一つ一つの精度は追わず、アルバイトを利用して大量に入れれば十分である。流出した個人情報にはアダルトビデオ関連のものもあれば、美容整形利用者のものもある*3。これら組み合わさった情報があれば以前より格段に効率的な、時に脅迫的なセールスが可能になるだろう。

ドメインをまたがるcookieや、i-modeID*4が誰でも利用できるようになったことがセキュリティ上の問題になっている。各サイトをまたがるIDが存在すると各サイトの情報を一つに集めることができるからだ。これらIDが容易に変更できず、ユーザーに告知されないことが特に問題になっていた。今度は住所がIDの変わりになっているといえないだろうか。容易に変更できず、ユーザーに告知されず流出し、個人情報を結びつける。

Googleストリートビューは「名寄せ」が簡単なこの時代に、本人の許可なく個人情報を検索可能にしている。あなたの資産や家族構成は、誰にでも検索可能だ。このシステムにrobot.txtはない。