ニコニコ動画新ランキングの分析
【要約】
ニコニコ動画のマイリストランキングの今回の変更は、これまで問題となっていた「ライトユーザーがニコニコ動画で優良なコンテンツにアクセスできない」という問題を解決する有意義なものであるといえます。
その反面「新規動画への接触機会の減少」を産んでしまいました。これは動画投稿者の投稿モチベーションが重要なニコニコ動画にとって大きな問題です。
問題を解決するため「毎時リセット更新型マイリストランキング(週間・月間ランキング作品を除く)」を提案いたします。新規動画がランクインしやすくなるため、新規動画との接触機会を増え、多くの作品が発掘されると考えられます。
■4種類のユーザー
ニコニコ動画ユーザーは800万IDにものぼり、様々な指向を持っています。まず、ニコニコユーザーをサイトとのつきあいかたから4つのセグメントに分割します。
○ジャンルファン
アイマス厨を代表とする、特定ジャンルの動画が見たいユーザー。ボカロ厨、ニコニコ技術部厨、車載動画厨、鉄道動画厨など。音楽でいえば「ジャズが好き」「クラシックが好き」「前衛音楽が好き」な人。彼らは自分が欲しいモノを知っている。
○ニコ厨(ヘビーユーザー)
ニコ動を見たいユーザー。ニコニコ動画に詳しく、新しくて面白い動画が見たいユーザー。ランキングを追いかけ、その流行に敏感な層。音楽でいえば「音楽ファン」。雑誌を買ったりフェスとかにいくような人。
○一般人(ライトユーザー)
動画でもSNSでもヤフオクでもなんでもいいから、ちょっと暇が潰したいユーザー。フタエノキワミとかランランルーとかオーエンとかよくしらないけど、面白いものがあったら見てみたいなという人。音楽でいえば「年に2,3枚ベストアルバムを買うくらいの」人。CDショップにも滅多に行かない。コンビニで十分。一番多い。
○制作者
自分の作った動画が注目されて欲しいユーザー。音楽でいえば作曲者。一番少ない。
■各ユーザーに対するニコニコ動画の機能
運営は、以上4つのセグメントの満足度を最大化することを目指しています。各ユーザーに対してどのようなアプローチをしてきたのか、みてみましょう。
ジャンルファンには「**の動画が欲しい」という明確な要求があります。それれに応えるには検索の充実が必要です。「検索」「タグ」「コミュニティ」そして今度実装されるらしい「タグ検索」を用意しています。運営はジャンルファンのために適切なツールを提供しているといえるでしょう。
ニコ厨は「新しい、面白い動画が見たい」とおもっています。彼らが1日に5動画以上閲覧するであろうことを考えると、新しいものを常に用意する必要があります。特定ジャンルのモノが欲しいわけではなく「面白いもの」が必要なので、人気がわかる必要があります。毎日入れ替わり、人気がすぐに反映される毎時更新マイリストランキングはニコ厨にぴったりのツールです。
制作者は「自分の動画を見てコメントしてほしい」とおもっています。動画がコメントをもらうには、まず、1度でも目にしてもらわなくてはいけません。ジャンル動画であればジャンルファンが見つけてくれますが、そうでない動画に注目を集めるのは至難の業です。そのためランキングやタグなどに加え「新着一覧」「きまぐれ検索」などで対応しています。ランキング以外では十分な有用性をもっているかは疑問の余地があります。
ライトユーザーは「何も知らない私でもわかる、面白く暇つぶしできるものがほしい」「ものすごく流行っているものを、みてみたい」と思っています。たまたまニコニコ動画にアクセスした「おとうさん・おかあさん」のような層です。彼らはニコ動の濃い部分には興味がありません。人数が多いため、平均すると薄い嗜好をもっています。ニコ厨が好むような動画ではなく、「ねこ鍋」のように幅広い層に訴える動画や、「みっくみくにしてあげる」のように強いコンテンツパワーをもった動画を届ける必要があります。運営は「TOPページバナーやニコニコニュースからの誘導」や「月刊ランキングシステム」で対応していましたが、不十分だったといえるでしょう。
■今回のランキングの目指す箇所と問題点
これまでのマイリストランキングには「ライトユーザーに動画を届けられていなかった」という問題がありました。そこでデイリーランキングが1日1回更新となり、週間がデフォルトになりました。今回の変更のメリットとデメリットを見てみます。
メリットは「週間ランキングが一番目立つようになり、ライトユーザーの目にとまるようになったこと」です。ライトユーザーはニコニコ動画の操作に成熟しておらず、週間ランキングを選んで表示するようなことはしません。書籍に興味の薄いひとは本屋で平積みしか見ず、音楽に興味が薄いひとはタワレコで店頭にあるやつしか見ないのと同様です。見て判るような場所に置いておくことが必要になります。
ファンにしてみればニワカでミーハーでランキング頼みな一般人は気に障る存在かもしれません。しかし、世の中を動かしていくのはいつも彼らです。ジャンルの壁を破り、ライトユーザーまで届いた作品こそが「大ヒット」と呼ばれ大きな話題を呼び、みんなの記憶に残っていくのです。ニコ動で今週一番面白い動画を、彼らにしっかり届けるようなランキングになったことは、ニコニコ動画にとってプラスであると思います。
デメリットは「新着動画が注目される機会が減ったこと」です。 動画投稿サイトの生命線は「投稿される動画の数とクオリティ」です。違法動画を排除する方向のニコニコ動画にとって、オリジナル作品を投稿してくれる投稿者を何より大切にしなくてはいけません。
動画投稿者が望んでいるのは「自分の動画を見てコメントしてくれる」ことです。投稿者のために、新着動画をニコ厨に届けることが必要です。しかし、ただ単に新着一覧として届けるのでは「面白いものがほしい」というニコ厨にとって十分ではありません。「こいつが面白いよ」という評判を産む形で届けなくてはいけません。
■各種の改善案
ランキングの変更に対して各種提案がされています。それらがどんな意味を持つのか考えていきます。
「ホットリストがあれば解決する」
運営は事前に接触機会が減る問題には気づいており、その対策としてホットリストを実装しています。しかし運用の結果上位ランキング動画が掲載され、新着動画との接触機会が増えるシステムにはなっていません。
「ランキング動画カテゴリを作れば解決する」
新しい動画との接触機会を増やすものではありません。ジャンルファンやニコ厨向けとしては有用な提案です。
「はてなブックマークなど外部評価システムを充実させれば接触機会が増えて解決する」
youtubeは外部評価システムが強い力を持っています。youtubeのような方向がニコニコ動画全体にとってメリットかどうかは議論の余地があります。
「毎時更新マイリストランキングを、毎時更新コメント人数ランキングを作れば解決する」
工作はしづらくなりますし、新着動画との接触はこれまで通りといえます。ある程度の長さの動画や、コミュ二ヶーション要素の強い動画があがることになります。
「コンシェルジュ制度をニコニコ動画内に持てば解決する」
ニコにコミュニティがコンシェルジュ制度を指向したものです。また、過去にあったランダムでマイリストを紹介した企画も同様の方向です。TOPページからの運営誘導されているコンテンツも、運営によるライトユーザー向けのコンシェルジュといえます。ユーザーによるコンシェルジュはニコ厨向けの動画を効率よく発掘するためには有用ですが、多くの新着動画を広く目にとめるためのものではありません。
■週間月間を除く毎時ランキングの提案
これまでの議論を踏まえ「今後のランキング」について考えます。
「新着動画が注目される機会が減った」という問題を解決するために、「毎時リセット型更新マイリスト人数(週間・月刊ランキング作品を除く)」を提案します。これは動画投稿者とニコ厨向けであるため、デフォルト表示させる必要はありません。(長々かいてきてアレですが、運営長とほとんど同じ結果になりました)
「毎日新しい・面白いものがほしい」ニコ厨には、1時間単位で面白い画像を集計してくれるランキングはぴったりです。ある程度の注目があつまったあとは、ジャンルファンができたり、ニコ厨が盛り上げて日間、週間へと繋がることでしょう。
新着動画に注目が集めるためのものなので、すでに評判が確定している週間・月刊ランキング作品が入る必要はありません。これらを殿堂入り扱いすることで、動画投稿者が目指す方向が明確になるメリットもあります。
■まとめ
この文章では、まずユーザーを4つのセグメントに分け、彼らが何を求めて居るのか明確にしました。運営のランキング変更は、これまで十分に満たされていなかったライトユーザー向けのものであること、そしてライトユーザーへの施策はニコニコ全体にとって無意味なものでないことを述べました。ランキング変更によってうまれた新着動画接触機会の減少に対して、運営長の云う「毎時ランキング」が有効な施策ではないかと考えます。
なお、新規投稿動画への接触が愉しく増えれば、毎時ランキングにこだわる必要はありません。ニコニコ動画がよりニコニコできるサイトになることを望みます。以上。