フェージング(図 M)

 伝搬媒質の屈折率や減衰率が時間的に変動したり、送受信点が移動したりすることで、受信に影響がでることをフェージングといいます。
 フェージングにはいくつかの種類があります。
 シンチレーションフェージングは空気の対流によって起きるものです。大気の一部分に0.1秒から数秒の周期で電界強度に小さな変動がおきます。長距離伝搬、波長の短い伝搬で問題になります。
 K型フェージングは等価地球半径計数kが時間的に変化するために起きます。Kが1の時は直接波となりますが、Kが1以下になると地面に反射し減衰します。1以上になると上空で間借り、反射波が受信点で直接波と干渉してしまいます。K型フェージングは通信品質に致命的な影響を当たるため、大地と伝搬経路間の距離を十分にとったり、大地反射の小さい伝搬経路を選択する必要があります。
 ダクト型フェージングはダクト層の発生によって起きます。大気中で温度や湿度の急激な変化や逆転があった場合、屈折率の違いがあらわれます。これをダクト層といい、ここに侵入した電波は地表との反射を繰り返し、通常より遠方まで伝播します。これによって干渉がおきたり、減衰領域が受信点となるために大きなフェージングが起きます。時には数10dBにも及び、通信品質に影響を与えます。
 吸収フェージングは大気中の雨、雪、霧による吸収や錯乱によるフェージングです。
 偏波フェージングは電離層電波で起こるもので、電波の偏波が生じます。
 跳躍フェージングは電離層の変動によって電波の受信できない地帯が産まれることです。地表波でカバーできる範囲の外で、電離層電波の最小距離である跳躍距離よりも短い地帯では受信ができなくなります。
 移動無線におけるフェージングは、ビルなどの回折反射錯乱によって問題がおきます。特に市街地ではビルが複雑で移動体は激しく変動する定在波の中を移動するため、変動の早さは電波の周波数と移動速度に比例します。